統合失調症ってどんな病気?

「統合失調症」は、脳内の機能の一部が低下することにより、思考や感情がうまくコントロールできなくなってしまう「脳の病気」です。
2002年に「精神分裂病」という名前から改名されました。
代表的な症状に「幻覚」「幻聴」「妄想」などがあります。

統合失調症の患者さんは、人口のおよそ1%といわれています。つまり100人に1人があてはまる可能性があり、決して珍しい病気ではありません。

年齢でみると、70~80%が思春期から30歳頃までに発症します。
男性の方が早い時期に発症する傾向があり、女性では40~45歳で発症することもあります。

かつては有効な治療法がなかったことから、この病気は「人格が崩壊する恐ろしい病」として恐れられていました。しかし、近年、有効な治療法が開発され,現在では副作用の少ない新しいおくすりによる治療が定着しつつあります。

統合失調症を患っていても、服薬と休養により、日常生活に支障をきたさない程度にまで回復する人がほとんどです。
重度の場合には入院治療などが必要になりますが、適切な治療を受けることで治る病気です。

 

どのような症状があるの?

統合失調症を患うと、幻覚や妄想がみられたり無気力になるなど、社会生活を行うことが難しくなってしまう場合があります。
症状には主として「陽性症状」、「陰性症状」、「認知機能障害」があります。

いない人や物が見えると感じる(幻視)、誰かの声が聞こえると思い込んでしまう(幻聴)、におわないはずのものから異臭がすると感じる(幻臭)、実際には起こっていないことが現実として感じられる(妄想)等、これら明らかに通常ではありえない思考や感情、行動が出てくる状態が「陽性症状」です。

また、統合失調症になると、集中力が低下し、細かい作業や意思疎通などが出来なくなることがあります。読解力や記憶力などが欠けたり、会話がすぐに飛んで意味がわからなくなってしまうなどの症状もみられます。これを「認知機能障害」と呼びます。

「陰性症状」は、以前は簡単だったことが難しくなったり、感情が乏しくなったりす
る状態です。一見「うつ病」のようにみえるかもしれません。
今まで興味があったことに対して急に興味を失い、喜びや悲しみなどの感情を表現することが難しくなります。人との関わりを一切拒絶し、外出を拒むようにもなります。これが「陰性症状」です。

 

どうして統合失調症になってしまうの?

統合失調症の原因ははっきりとわかっておりませんが、統合失調症の症状が出ているときの脳の働きについては、徐々に明らかにされつつあります。

統合失調症に大きく関与しているのが、「ドーパミン」や「セロトニン」といった神経伝達物質の異常だといわれています。
「陽性症状」ではドーパミンが過剰になっており、「陰性症状」ではドーパミンが極端に少なくなっていることが報告されています。そのため、興奮を抑えられなくなったり、何もやる気が起きなくなるなどといった症状が起こるのです。

患者さんのご家族のなかには、育て方や生活上のストレスが原因だと誤解されている方がいらっしゃいますが、そうではありません。
もともと体質的に脳に発症しやすい傾向を持ち、そのうえで、成長過程での様々なストレスが発症の引き金になるという説が有力です。

 

統合失調症は遺伝するの?

どのような病気にもいえることですが、統合失調症にも遺伝性が全く無いとはいえません。しかし、統合失調症が遺伝する確率は10%前後といわれ、高いものではありません。(ただし両親共に発症している場合は40%前後)

性格や育つ環境にもよりますし、発症した場合でも早期発見できれば社会生活には問題ない状態を保つことも出来ます。

 

どのような治療をするの?

統合失調症の症状である幻覚や妄想などは、脳の働きがうまく調整出来ないことから起こるといわれています。治療には「抗精神病薬」が用いられます。

症状の軽い方であれば、きちんとおくすりを服用することで、他の疾患同様、安定した社会生活を送ることができます。どんな病気でもそうであるように、早期発見・早期治療が大切です。

おくすりにより眠気などの副作用が出ててしまう場合は、すみやかに医師に相談してください。勝手に量を減らしたり止めたりすると、症状が悪化してしまうこともありますので注意しましょう。

また、おくすりによる治療と並行して、社会生活機能の回復を図るリハビリテーションやデイケアに通所することや、患者さんを支えるご家族が病気への理解を深めることが、統合失調症の治療にはとても重要です。

統合失調症は脳の病気です。適切な治療により必ず改善します。
お気軽に医療機関にご相談してみてください。

(監修:Dr.Toyo Kato)