眠れない・・・羊に頼るのはもうやめよう

古くから「眠れないときは羊を数えるといい」といわれます。
しかし、「羊が1匹、羊が2匹・・」と数えても全く眠れなかった、頭の中が羊でいっぱいになってよけい眠れなくなった、という経験を持つ人は多いと思います。

ひとことに「眠れない」といっても、人によってその原因はさまざまです。
生活習慣の見直し、ストレスの緩和、環境の調整など、ご自身の工夫や努力によって改善することもありますが、それでもなかなか眠れないというときは、睡眠薬を利用するという方法があります。

睡眠薬というと、「依存症になるのでは?」とか、「大量に飲むと死んでしまうのでは?」という不安も多く聞かれますがそんなことはありません。
今日は、睡眠薬について、その安全性や飲み方についてご説明します。

 

睡眠薬は安全なおくすりです

かつて(昭和初期~1960年代)広く使われていた「バルビツール酸系」、「非バルビツール酸系(バルビツール酸系を改良したもの)」と呼ばれる睡眠薬は、効果が強く、大量に服用すると死亡するなどの問題がありました。

しかし、現在使われている睡眠薬は「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」、「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」といわれるもので、医師の指示に従って服用すれば、安全性が高く、依存も少ないおくすりです。

 

睡眠薬にもさまざまな種類があります

睡眠薬を使う際、最も重要なのは、その「持続時間」と「内服時間」です。
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、その作用時間によって分類されており、症状のタイプによって使い分けます。

【睡眠薬としてよく使われるおくすりの種類】

1)超短時間作用型(3時間程度の効果を持つ)
ハルシオン、アモバン、マイスリーなど

2)短時間作用型(6時間程度)
レンドルミン、デパス、リスミー、エバミール、ロラメットなど

3)中時間作用型(12時間程度)
ベンザリン、ロヒプノール、ユーロジンなど

4)長時間作用型(24時間以上)
ソメリン、ドラールなど

5)抗不安薬(中時間作用型、眠気を引き起こす作用は弱い)
セルシン、ジアゼパム、リーゼなど

最近は、ドラッグストアなどでも睡眠改善薬が市販され、気軽に手に入れることができるようになりました。
しかしこれらは「抗ヒスタミン薬」とよばれるおくすりで、風邪薬や花粉症の薬などに含まれる、眠くなる「成分」です。一過性の不眠には有効ですが、連用すると効きにくくなる場合があります。
3週間以上不眠が続く場合は、医療機関から処方される睡眠薬を服用することをお勧めします。

 

睡眠薬の副作用

睡眠薬にも副作用はあります。
中でも一番多いのは、翌日のふらつき、眠気が残る、といった症状です。
これは、副作用というよりも、内服時間が適切でない、または種類が合わないという原因が考えられます。
医師や薬剤師と相談しながら、自分の症状や体質に合った睡眠薬を見つけていきましょう。

 

睡眠薬を安全に服用するために

安全性が向上しているとはいえ、睡眠薬を服用する際には、いくつかの注意が必要です。

「超短時間作用型」の睡眠薬は服用後、すぐに(30分以内)就寝してください。

妊娠している方、授乳中の方はいずれの睡眠薬も飲んではいけません。
睡眠薬は、赤ちゃんに悪影響を与える可能性があります。

また、糖尿病や高血圧などの薬を服用している方は注意が必要です。
糖尿病や高血圧のおくすりの中には、一緒に服用すると、睡眠薬の分解を遅らせ、作用が強く出すぎてしまうことがあります。
他のおくすりを服用している方は、必ずそのことを医師や薬剤師に伝えてください。

アルコールと一緒に飲むことも、それぞれの作用が効きすぎてしまう恐れがありますので絶対にやめましょう。

 

睡眠薬のやめ方

現在睡眠薬を服用されている方で、「できれば早く止めたい」という方は多いと思います。しかし、不眠が改善されないまま自己判断で止めてしまうことで、さらに不眠を悪化させてしまうことがあります。

睡眠薬をやめるときは、急にやめるのではなく、少しずつ量や回数を減らしていくことが大切です。一番重要なのは、必ず医師・薬剤師と相談することです。

 

心地よい睡眠のために

「眠り」は、人が健康で快適に生活するために欠かせないものです。
眠りたいのに眠れない、そんなつらい症状でお困りの方は、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

(監修:Dr.Toyo Kato)